フィルジル・ファン・ダイク

オランダ人の父とスリナム人の母を持つオランダ代表のフィルジル・ファン・ダイクは文字通りの苦労人だ。ユース時代を過ごしたヴィレムIIでトップチームに昇格できず、20歳の誕生日が2ヶ月後に迫っていた2011年5月にフローニンゲンでプロデビューした。

さあ、ここからという矢先の12年、ファン・ダイクに未曽有の試練が襲い掛かる。虫垂炎(盲腸)を患い、それが悪化して腹膜炎と腎炎を発症。生命の危機に瀕し、財産相続に関する書類にサインまでしたという。幸い、手術の末に一命を取り留めたものの、本人は後年『FourFourTwo』で「一歩間違えれば、あの時に終わっていた」と振り返っている。

この危機を乗り越え、ピッチに戻ってきたファン・ダイクは13年夏にセルティックへ移籍。スコットランドの名門でリーグ2連覇に貢献し、15年夏にサウサンプトンに引き抜かれた。そして加入2シーズン目の途中から主将を務めるなど、チームの主軸として印象的な活躍を続け、17年12月にDF史上最高額(当時)の移籍金8500万ユーロでリヴァプールへ。生命の危機に瀕した5年後に、世界でもっとも高額なDFとなったのである。

100億円を超えるビッグディールの成立を受け、元イングランド代表のアラン・シアラーやハリー・レドナップらご意見番は「そんな価値はない」と一刀両断したが、彼らの見立てが誤りだったのは今のファン・ダイクに対する世界の評価からも明らかだろう。

守護神 アリソン・ベッカー らとともに、リヴァプールの弱みだった守備を強みに変えたファン・ダイクは現在、世界ナンバー1のCBという名声を手にしている。チャンピオンズリーグ制覇の原動力になるなど圧倒的なパフォーマンスを見せながら、2019年のバロンドールを受賞できなかった際は「スキャンダル」という声も挙がったほどだ。


プレースタイル

地上、空中問わずに対人プレーに滅法強く、ドリブルで抜かれただけでニュースになるほどの守備能力を誇る。タックル、ブロック、カバーリングのどれもが素晴らしく、なによりプレーを読む力が傑出。さらに足下の技術やフィード力も高く、ビルドアップにおける貢献度も高い。まさに完全無欠のCBとして欧州王者に君臨している。

セットプレーのターゲットマンとしても頼りになる存在で、打点の高いヘディングを武器にクラブと代表で貴重なゴールをいくつも決めている。

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